
「技術に集中して話せないなら、美容師を辞めた方がいい」
美容師になってから、まわりから何度もそう言われました。
施術中は、技術に集中してお客様と会話ができない。 場を盛り上げられない。 人見知りで、うまく話しかけられない。
それが「美容師失格」だと、ずっと思っていました。
それでも、結果は出ていた時期があった。
新規のお客様を多く担当していた時期があった—— 「Iroさんで」と指名してくれる人がいた。
その経験が、今も私の軸になっています。
パリで出会った、ジェロウム。
20代のとき、シャンゼリーゼの美容室で見識を広げました。
そこで出会った70歳を超えた美容師——ジェロウム。
サングラスをかけ、毎日違う服装で颯爽と立っていた。
彼はシザー一本だけで、長さも量感も質感も、ロングからショートに短時間で仕上げた。
その手元を見て、初めて思いました。
「技術に唯一の正解はない。」
何年もかけて、今、気がついたこと。
うまく話せなかった。
でも——
うまく話せない自分を変えようとするより、
無理に話さなくてもいい場所を作ればいい。
美容室が苦手な人がいる、静かに過ごしたい人もいる。
鏡の前で、ずっと気を張っている人がいる。
帰るころには、なぜか疲れている人もいる。
その人たちは、今の美容室では——
「少し疲れている」
それは——
その場所が、合っていないだけかもしれない。
浜松の、路地の奥に。
2m以内の路地の先に、平屋があります。
通りからは全く見えない。
静かな場所です。
そこに、1席だけの美容室があります。
無理に話さなくてもいい。
ただ——静かに座っているだけでいい。
話したい時は、もちろんお話しください。
静かに過ごすことも、会話をすることも、
どちらも自然であることを大切にしています。
技術への正直な想い。
「この施術は、お客様の日常に合っていたか。」
「家で乾かしたとき、ちゃんとまとまっていたか。」
答えは——
教科書の中にも、同業者の言葉の中にもない。
来てくれたお客様と一緒に、少しずつ出していくものだと思っています。
余白という名前について。
「余白」とは——
何もない空間のことではありません。
何かが生まれる余地のある場所。
疲れた心が、静かに戻ってこられる場所。
答えが埋まっていない、正直な場所。
うまく話せなかった自分が、たどり着いた答えです。
あなたが「やっとここに来られた」と思える場所を——
路地の奥で、静かに待っています。
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なぜ、静かな美容室をつくったのか
ある美容師に言われた言葉が、ずっと頭に残っている。「技術中に話しかけないのか。客は物じゃなく人だ。会話できないなら客はつかない。君のためを思って言う。美容師を辞めた方が、君の幸せのためだ。」
自販機の下の小銭を探していた美容師
ホットペッパービューティーで新規のお客様をどんどん集め、数をこなして売上を上げていく。それは美容室として正しいやり方の一つです。 でも、私には適合しない。
髪と、美容室のこと
