
ある美容師に言われた言葉が、ずっと頭に残っている。
「技術中に話しかけないのか。客は物じゃなく人だ。会話できないなら客はつかない。君のためを思って言う。美容師を辞めた方が、君の幸せのためだ。」
その人は、親切心で言ったのだと思う。だからよけいに、刺さった。
人見知りのわたしだから、苦しんでいる人の気持ちがわかる。
弱点だと思っていたものが、そのままこのサロンの核になった。
無理して会話をしないことは、サービスの手抜きじゃない。技術だけに100%集中するための、正直な選択だ。
美容室ディーラーとして13年、百店舗以上の美容室を回ってきた。プライベートの話は一切しない。それでも関係は続いてきた。
正直に言うと。わたしは話すことが好きだ。
それでも、会話に気をとられて技術が歪むのが、どうしても嫌だった。
人に気を使うタイプのせいか、お客様と話しながらだと、どこかに意識が引っ張られて、技術に100%集中できない自分がいる。
多くの美容師が、話しながら自然に技術を提供できるなかで、わたしはそれが苦手だと、正直に認めるまでに時間がかかった。
でも、美容室の本質は、ヘアスタイルを提供する場所だと思っている。
それを確実に押さえなければ、お客様にもう一度来ていただくことはできないし、美容師としての社会への貢献も、突き詰めればそこにあると思っている。
お客様は、自分に合う美容師を見つけると、ついていく。 一度つかんだ信頼関係は、一生を共にするほどの強さになる。
その強さを知っているから、わたしはもう一度、美容師を始めた。 そして、始めるにあたって自分に課したことがひとつある。
一人も、悲しませない。ヘアスタイル提供という技術の責任者として。
そのために、自分の得意なことに特化した。 接客スタイルを固めた。 誤解が生まれないよう、伝え方もブログで整えた。
その積み重ねの先に、「静かな美容室」というコンセプトが生まれた。
余白は、まだわたしなりの上を目指している。
ただ、その「上」は、世間一般の基準ではなく、わたし自身が納得できる技術と誠実さの話だ。
小さく見えるかもしれないけれど、それがわたしの美容師としての軸だと思っている。
当サロンでは、静かに過ごしたい方にも心地よくお過ごしいただける空間づくりを大切にしています。
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なぜ、静かな美容室をつくったのか
ある美容師に言われた言葉が、ずっと頭に残っている。「技術中に話しかけないのか。客は物じゃなく人だ。会話できないなら客はつかない。君のためを思って言う。美容師を辞めた方が、君の幸せのためだ。」
自販機の下の小銭を探していた美容師
ホットペッパービューティーで新規のお客様をどんどん集め、数をこなして売上を上げていく。それは美容室として正しいやり方の一つです。 でも、私には適合しない。
髪と、美容室のこと
