「話せないなら、美容師を辞めた方がいい」

美容師になってから、何度もそう言われました。

お客様と会話ができない。 場を盛り上げられない。 人見知りで、うまく笑えない。

それが「美容師失格」だと、ずっと思っていました。

それでも、結果は出ていた時期があった。

新規のお客様を多く担当していた時期があった—— 「Iroさんで」と指名してくれる人がいた。

その経験が、今も私の軸になっています。

「自分の技術は本当に正しいのか」と問い続ける姿勢として。

パリで出会った、ジェロウム。

20代のとき、シャンゼリーゼの美容室で見識を広げました。

そこで出会った70歳を超えた美容師——ジェロウム。

サングラスをかけ、毎日違う服装で颯爽と立っていた。

彼はシザー一本で、ロングをショートに15分で仕上げた。

その手元を見て、初めて思いました。

「技術に唯一の正解はない。」

16年かけて、気がついたこと。

話せなかった。

でも——

話せない自分を変えようとするより、

話さなくていい場所を作ればいい。

美容室が苦手な人がいる。

鏡の前で、ずっと気を張っている人がいる。

帰るころには、なぜかどっと疲れている人がいる。

その人たちは、今の美容室では——

「少し疲れている」

それは——

その場所が、合っていないだけです。

浜松の、路地の奥に。

2m以内の路地の先に、平屋があります。

通りからは全く見えない。

静かな場所です。

そこに、1席だけのサロンを作ります。

話さなくていい。

ただ——

静かに座っているだけでいい。

技術への正直な想い。

完璧な技術を持っている、とは言えません。

今も問い続けています。

「この施術は、お客様の日常に合っていたか。」

「家で乾かしたとき、ちゃんとまとまったか。」

答えは——

教科書の中にも、同業者の言葉の中にもない。

来てくれたお客様と一緒に、少しずつ出していくものだと思っています。

余白という名前について。

「余白」とは——

何もない空間のことではありません。

何かが生まれる余地のある場所。

疲れた心が、静かに戻ってこられる場所。

答えが埋まっていない、正直な場所。

話せなかった自分が、たどり着いた答えです。

あなたが「やっとここに来られた」と思える場所を——

路地の奥で、静かに準備しています。


Iro

美容師歴16年 | MASSATO Paris(Champs-Élysées)渡仏スタージュ(1年間) | 美容室ディーラー歴13年


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